「将来は事業会社のDX責任者になりたい」「ポストコンサルとして市場価値を最大化したい」と考えていませんか。
日本企業ではDXの重要性が叫ばれて久しいものの、成果が出ている企業は決して多くありません。DXの成果が期待通り以上と回答した企業は4割未満にとどまり、実行フェーズでは深刻な人材不足が続いています。
この構造的なギャップを埋める存在として、いま最も注目されているのが「内部コンサルタント」からDX責任者(CDO)へと進化するキャリアです。本記事では、主要企業の事例、報酬相場、失敗パターンまでを体系的に整理し、コンサル志望者・現役コンサルタントが取るべき戦略を具体的に解説します。
- 日本企業のDXは今どこで止まっているのか――「実行フェーズ」の人材不足という構造問題
- 内製化のジレンマと外部依存の限界――なぜ内部コンサル機能が求められるのか
- 内部コンサルタントとは何者か――経営企画・DX推進部門のリアルな役割
- コンサルからDX責任者までの3段階キャリアモデル
- 外部招聘CDOと内部昇格型の違い――成功確率を左右する組織力学
- 主要企業に学ぶDX責任者のキャリア類型――トヨタ・SOMPO・三井物産・リクルートの事例
- DX責任者の年収レンジと報酬構造――2,000万円の壁をどう超えるか
- ポストコンサル転職で失敗する人の共通点――『正論』と現場抵抗のメカニズム
- ブラックボックス化したレガシーと技術リテラシー不足という落とし穴
- 最初の90日で信頼を勝ち取る――内部コンサル成功のアクションプラン
- コンサル志望者が今から準備すべきスキルセットと案件選びの戦略
- 参考文献
日本企業のDXは今どこで止まっているのか――「実行フェーズ」の人材不足という構造問題
日本企業のDXは、いま明確に「実行フェーズ」で足踏みしています。
経済産業界で長らく警鐘が鳴らされてきた「2025年の崖」を前に、多くの企業が戦略策定やPoCまでは進めました。しかし、本格的な業務変革や全社展開の段階でブレーキがかかっています。
PwCの調査によれば、DXの成果が「期待通り以上」と回答した企業は38%にとどまり、デジタル人材育成が進んでいる企業は15%という結果でした。構想はあるが、やり切れる人がいないという現実が浮き彫りになっています。
| フェーズ | 主な内容 | ボトルネック |
|---|---|---|
| 戦略策定 | DXビジョン・中計への反映 | 概念論に留まりやすい |
| 企画・要件定義 | PoC・ツール選定 | 部分最適化 |
| 実行・運用 | 全社実装・業務改革 | 人材不足が深刻 |
株式会社メンバーズの「攻めのDX実態調査2025」でも、実行工程で人材が「大幅に不足している」と答えた企業は46.2%に達しています。戦略や企画よりも、現場で動かせる人材が圧倒的に足りていないのです。
さらに注目すべきは、内製化を掲げる企業ほどDX達成度が低いという逆説的な傾向です。内製化を進める企業群で「人材育成・採用」が進んでいると答えた割合は28.3%にとどまりました。
組織はつくったが、変革をリードできる実務人材がいないという構造問題がここにあります。
実行フェーズでは、単なるIT知識では足りません。既存業務を止めずに刷新し、部門間の利害を調整し、ベンダーを統制しながら成果を出す総合力が求められます。
DX失敗要因として「経営層のコミットメント不足」や「現場の抵抗」が頻出するのは、実行局面での推進力が欠けている証左です。構想段階では賛同されても、実装段階では痛みを伴うため、誰かが責任を持って前に進めなければなりません。
ここに外部コンサル依存の限界も表れています。提案書やロードマップは描けても、日々の業務プロセス変更や定着化までは担い切れないケースが多いからです。
つまり、日本企業のDXが止まっている本質は、テクノロジー不足ではありません。戦略と現場を橋渡しできる「実行人材」の構造的欠落にあります。
このギャップを埋められる人材こそ、これからの市場で最も価値を持ちます。コンサル志望者にとって重要なのは、戦略を描く力だけでなく、実装し切る力をいかに身につけるかという視点です。
DXの成否は、構想力ではなく実行力で決まる時代に入っています。
内製化のジレンマと外部依存の限界――なぜ内部コンサル機能が求められるのか

日本企業がDXを進める中で直面しているのが、「内製化のジレンマ」と「外部依存の限界」です。
PwCのDX意識調査では、DXの成果が「期待通り以上」と回答した企業は38%にとどまり、デジタル人材育成が進んでいる企業は15%という結果が示されています。
重要性は理解していても、実行力が伴っていない現実が浮き彫りになっています。
| 項目 | 主な課題 | 構造的背景 |
|---|---|---|
| 内製化 | 人材育成が追いつかない | 専門スキルの不足 |
| 外部委託 | ノウハウが蓄積しない | 丸投げ体質 |
| 実行フェーズ | 推進リーダー不在 | 部門縦割り |
メンバーズの「攻めのDX実態調査2025」によれば、戦略・企画工程では約半数が内製化を進めている一方、実行工程では外部依存が続いています。
さらに示唆的なのは、内製比率が高い企業ほど人材育成の達成度が28.3%と低い点です。
形だけの内製化は、成果を保証しないという厳しい現実があります。
一方で、外部コンサルティングファームへの全面委託にも限界があります。
外部人材は短期間で高度な分析や戦略立案を行えますが、プロジェクト終了とともに知見が組織外へ流出しやすいという構造的問題を抱えています。
実行段階で現場の抵抗や調整が発生した際、最終的に責任を負うのは社内です。
DXの失敗要因として「経営層のコミットメント不足」や「現場の巻き込み不足」が挙げられるとSIGNATE総研などが指摘していますが、これは外部任せの体制では乗り越えにくい壁です。
現場の文脈を理解し、組織政治を踏まえながら意思決定を前に進める役割は、内部にこそ必要だからです。
戦略と実行を翻訳できる存在が社内にいないことこそが、本質的なボトルネックです。
特に実行フェーズでは、人材が「大幅に不足している」と回答した企業が46.2%に達しています。
戦略を描ける人材よりも、部門横断で調整し、KPIを設計し、ベンダーを統制しながら定着まで伴走できる人材が不足しているのです。
この空白を埋めるのが、外部の知見を持ちながら内部に根を張る「内部コンサル機能」です。
内部コンサルは単なる企画担当ではありません。
経営の抽象的ビジョンを業務要件に落とし込み、外部ベンダーを適切にマネジメントし、社内に知識を蓄積するハブとして機能します。
内製と外注の対立を超え、両者を再設計する触媒としての役割が期待されています。
つまり、内製化か外部依存かという二項対立そのものが誤りです。
求められているのは、外部の専門性を活用しつつ、組織内に変革能力を残す仕組みづくりです。
その中核に位置する内部コンサル機能こそが、これからのDX推進体制の鍵を握っています。
内部コンサルタントとは何者か――経営企画・DX推進部門のリアルな役割
内部コンサルタントとは、肩書きこそ「経営企画」「DX推進室」「社長室特命担当」など多様ですが、実態は社内に常駐する変革のプロフェッショナルです。外部ファームと異なり、提案で終わらず、組織の中に入り込んで実行と定着まで責任を持つ点に本質的な違いがあります。
PwCのDX調査によれば、成果が期待通り以上と答えた企業は4割未満にとどまります。背景には「戦略は描けるが実行が進まない」という構造課題があります。そこで求められるのが、戦略と現場を翻訳し、部門横断で推進できる内部コンサル機能です。
具体的な役割は大きく三つに整理できます。第一に、全社横断の特命プロジェクト推進です。基幹システム刷新やデータ基盤統合など、既存組織では扱いづらいテーマを担います。
第二に、外部ベンダーのコントロールです。SIerやコンサルファームを使いこなし、成果物の品質・進捗・コストを管理します。単なる窓口ではなく、要件を定義し評価できる力量が求められます。
第三に、経営と現場の翻訳者としての役割です。「顧客体験を変える」という抽象的ビジョンを、具体的KPIや業務フローへ落とし込み、合意形成を図ります。
| 観点 | 外部コンサル | 内部コンサル |
|---|---|---|
| 立場 | 第三者・助言者 | 当事者・実行責任者 |
| 成果責任 | 提案・設計中心 | 実装・定着まで |
| 時間軸 | プロジェクト単位 | 中長期で継続 |
コトラの分析でも指摘される通り、企業が評価するのは業界知識以上に、論理的思考力やプロジェクト管理力といったポータブルスキルです。ただし社内では、それだけでは不十分です。組織の力学を読み、非公式なキーマンを巻き込む政治的感度も不可欠になります。
さらに、DX文脈では「実行フェーズ」の人材不足が顕著です。実行工程で人材が大幅に不足しているとする企業が4割を超えるとの調査もあります。つまり内部コンサルタントは、PowerPointではなく、現場の業務やシステムに踏み込む覚悟が問われます。
経営企画やDX推進部門は華やかに見えますが、実態は泥臭い調整の連続です。それでもなお、社内に知見を蓄積し、外部依存から脱却させる中核機能として、今後ますます重要性を増していきます。コンサル志望者にとっては、「外から助言する立場」から「中で変革を背負う立場」へと進化する第一歩となるポジションです。
コンサルからDX責任者までの3段階キャリアモデル

コンサルタントからDX責任者を目指すうえで、有力な道筋となるのが「3段階キャリアモデル」です。これは単なる肩書きの変化ではなく、外部の変革者から内部の経営当事者へと進化するプロセスを意味します。
PwCの調査が示すように、日本企業のDX成果は依然として限定的であり、実行人材の不足が深刻です。だからこそ、戦略と実行を橋渡しできる人材への需要が高まっています。
| フェーズ | 主な役割 | 獲得すべき力 |
|---|---|---|
| Phase1 | 外部コンサル | 仮説構築・構造化・PMO |
| Phase2 | 内部コンサル | 合意形成・実行統括・信頼構築 |
| Phase3 | DX責任者 | P/L責任・投資判断・組織変革 |
Phase1では、コンサルティングファームで徹底的に問題解決能力を磨きます。論理的思考やドキュメンテーションに加え、ITプロジェクトのPMOやデータ活用案件に関与することで、後のDX推進に直結する経験を積みます。KOTORAの分析でも、ポータブルスキルの汎用性が事業会社転身後の価値を左右すると指摘されています。
Phase2は事業会社への転身です。肩書きは経営企画やDX推進室長などさまざまですが、本質は「内部コンサル」です。ここで重要なのは、正論を振りかざすことではなく、現場から信頼を獲得しながら小さな成功を積み上げることです。メンバーズの調査が示す通り、内製化を掲げても実行力が伴わなければ成果は出ません。外部で培った構造化力を、実装と定着にまで落とし込めるかが分水嶺になります。
Phase3では、CDOや執行役員として全社のデジタル戦略を統括します。ここではコスト削減ではなく、デジタルを通じた事業創出が問われます。Morgan McKinleyなどのサラリーデータが示すように、上位ポジションでは数千万円規模の報酬も視野に入りますが、その前提はP/L責任と投資判断能力です。
外部アドバイザーとして助言する立場から、内部で意思決定を引き受ける立場へ。さらに最終的には、企業の将来を左右する資源配分を担う経営者へ。この進化を意識してキャリアを設計することが、DX責任者という到達点への最短ルートになります。
外部招聘CDOと内部昇格型の違い――成功確率を左右する組織力学
DX責任者の就任ルートは、大きく「外部招聘型」と「内部昇格型」に分かれます。どちらが優れているかという単純な話ではなく、組織の力学をどう味方につけられるかが成功確率を大きく左右します。
とりわけ日本企業では、肩書き以上に「誰の信任を得ているか」「どの部門と非公式な関係性を築けているか」が実行力を決めます。ここを読み違えると、どれだけ優秀でも孤立します。
| 観点 | 外部招聘CDO | 内部昇格型CDO |
|---|---|---|
| 初期の期待値 | 短期成果への強い期待 | 継続的改善への期待 |
| 組織の信頼残高 | ゼロからの構築 | 既存の人間関係を活用可能 |
| 抵抗勢力への対応 | 対立構造になりやすい | 水面下での調整が可能 |
| 失敗時の許容度 | 低い(更迭リスク高) | 比較的高い |
外部招聘型は、SOMPOホールディングスの楢崎浩一氏のように、明確なビジョンと外部ネットワークを武器に変革を加速させるケースがあります。CDO Club Japanでも紹介されている通り、同氏はシリコンバレーでの経験を背景に外部エコシステムを取り込みました。
しかしこれは例外的な成功例でもあります。外部から来たリーダーは、既存幹部層にとって「自分たちの延長線上にいない存在」です。成果が出るまでの猶予期間が極端に短いため、組織理解が浅い段階で大規模改革に踏み込むリスクがあります。
一方、内部昇格型は業務や歴史的経緯を熟知しています。トヨタ自動車の大西弘致氏のように、長年の事業経験を背景にデジタル領域を統括するケースでは、現場からの反発は相対的に小さくなります。
ただし内部昇格型にも弱点があります。それは「過去の成功体験」に縛られやすい点です。PwCのDX調査で成果創出企業が限定的であることが示唆するように、従来型マネジメントの延長では攻めのDXは進みません。
その意味で、いきなりCDOとして着任するよりも、内部コンサルやDX推進室長として数年かけて「政治資本」を蓄積するルートは合理的です。非公式なキーマン、予算決裁の実質的権限者、現場のオピニオンリーダーを把握できれば、変革の打ち手は格段に増えます。
コンサルタント志望者にとって重要なのは、肩書きの派手さではありません。組織内でどれだけ実質的な影響力を持てるかという観点でキャリアを設計することです。DXは技術課題であると同時に、極めて政治的な経営課題だからです。
主要企業に学ぶDX責任者のキャリア類型――トヨタ・SOMPO・三井物産・リクルートの事例
主要企業のDX責任者の経歴を俯瞰すると、単なるIT責任者ではなく、事業・技術・組織を横断するハイブリッド人材である点が共通しています。
トヨタ、SOMPOホールディングス、三井物産、リクルートの事例は、それぞれ異なる業態でありながら、DX責任者のキャリア類型を立体的に示しています。
| 企業 | 主なキャリア類型 | 特徴 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車 | 技術牽引型+内部幹部型 | 先端技術とプロパー幹部の融合 |
| SOMPO | 外部招聘型変革リーダー | 事業開発×デジタルの統合 |
| 三井物産 | 経営幹部候補型 | DXが経営戦略そのもの |
| リクルート | プロダクト志向型 | UX起点で事業全体を設計 |
トヨタでは、ジェームス・カフナー氏のような先端技術を牽引する外部人材と、大西弘致氏のように商品企画やITS領域を歴任したプロパー幹部が共存しています。公開されている経歴資料によれば、大西氏は長年にわたり「車と情報」の交差点を担ってきました。
巨大製造業では、ドメイン知識への深い理解と組織内信頼の蓄積が不可欠であり、純粋なITスキルだけではDX責任者には到達しにくいことが読み取れます。
SOMPOホールディングスの楢崎浩一氏は、三菱商事やシリコンバレーでのスタートアップ経験を経て招聘されました。CDO Club Japanなどでも紹介されている通り、同氏は事業開発とデータ活用を結びつける役割を担っています。
ここから見えるのは、外部エコシステムを社内に接続できる人材がDX責任者として価値を持つという構造です。
三井物産では、米谷佳夫氏のようにプロジェクト本部やICT事業本部を歴任したプロパー人材がCDOを務めました。商社においてDXはIT施策ではなく、ポートフォリオ経営そのものです。
つまりDX責任者は「ITの専門家」ではなく、将来の社長候補に近い経営ポジションとして位置づけられています。
一方リクルートでは、晒谷亮輔氏のようにプロダクトやマーケティングを横断してきた人材が事業成長を牽引しています。インタビューでも語られている通り、UXは画面設計に留まらず、ビジネスモデル全体の体験設計を指します。
ここではDXは改革プロジェクトではなく、プロダクト思考そのものが経営中枢にあります。
これらを総合すると、DX責任者の類型は大きく四つに整理できます。技術牽引型、外部変革型、内部幹部型、プロダクト志向型です。
コンサルタント志望者にとって重要なのは、自身がどの象限に近いのかを自覚し、不足するドメイン・実行経験・プロダクト感覚を意図的に補完することです。
主要企業の事例は、DX責任者が単なるデジタル推進担当ではなく、経営の中枢で価値創造を担う存在であることを明確に示しています。
DX責任者の年収レンジと報酬構造――2,000万円の壁をどう超えるか
DX責任者を目指すうえで、年収レンジと報酬構造の理解は不可欠です。特に年収2,000万円は、多くのビジネスパーソンにとって一つの分水嶺です。この水準を超えられるかどうかで、単なる「高給管理職」か「経営人材」かが分かれます。
人材紹介会社のサラリーサーベイやエグゼクティブ向け求人データによれば、DX関連ポジションの報酬レンジは概ね次の通りです。
| ポジション | 想定年収レンジ | 報酬の特徴 |
|---|---|---|
| 内部コンサル/DXマネージャー | 1,000万〜1,600万円 | 固定給中心+賞与 |
| DX本部長クラス | 1,500万〜2,500万円 | 業績連動賞与比率が増加 |
| Group CDO/執行役員 | 2,500万〜5,000万円超 | LTI・株式報酬を含む |
デロイト トーマツ グループの役員報酬サーベイによれば、日本企業でも変動報酬や株式報酬の比率は年々高まっています。つまり、上位ポジションほど「固定給」ではなく「企業価値への貢献」に連動する設計に移行しているのです。
2,000万円の壁を超えるかどうかは、肩書きではなく「責任範囲」で決まります。
第一に、コストセンターではなくプロフィットセンターを担っているかどうかです。単なるIT投資の管理者では1,500万円前後が上限になりやすいですが、デジタル事業の売上・利益に直接責任を持つ場合、報酬水準は一段上がります。
第二に、グローバルスコープの有無です。海外拠点のデータ基盤統合やITガバナンスを統括する役割を担う場合、英語力と多国籍マネジメント経験が評価され、レンジは2,000万円を超えやすくなります。
第三に、希少性です。AI活用、データマネジメント、クラウドアーキテクチャと経営戦略を結び付けられる「技術と経営のバイリンガル人材」は市場で枯渇しています。この希少性が報酬プレミアムを生みます。
加えて、スタートアップでは報酬構造が大きく異なります。キャッシュは抑制される一方で、ストックオプションによるアップサイドが設計されるケースもあります。ここでは年収額面ではなく、企業価値成長へのコミットメントがリターンを左右します。
重要なのは「いくらもらうか」ではなく、「どのリスクを取り、どの価値創出にコミットするか」です。
コンサルタントからDX責任者を目指す場合、短期的な年収維持に固執すると1,500万円ゾーンに留まりやすいです。一方で、P/L責任や事業成長へのコミットメントを引き受けられるかどうかが、2,000万円超への分岐点になります。
年収レンジは結果であり、市場は「変革の結果に責任を持てる人材」にのみプレミアムを支払います。報酬構造を理解することは、自らのキャリアをどのレベルの責任へ引き上げるのかを決める作業そのものです。
ポストコンサル転職で失敗する人の共通点――『正論』と現場抵抗のメカニズム
ポストコンサル転職で失敗する人には、驚くほど共通点があります。それは能力不足ではなく、「正論を正しいタイミングで使えていない」ことです。
DX失敗の要因として「現場の抵抗」や「社内の合意形成不足」が挙げられることは多く、各種調査でも繰り返し指摘されています。SIGNATE総研によれば、DXが頓挫する背景には組織文化や経営層と現場の温度差が存在するとされています。
問題は、元コンサルがその構造を理解せずに「正しさ」で突破しようとする点にあります。
| 元コンサルの思考 | 現場の受け止め |
|---|---|
| 非効率な業務は廃止すべき | 長年守ってきた仕事を否定された |
| データで判断すべき | 現場の経験を軽視している |
| スピードが重要 | 現実的な制約を無視している |
コンサルタントはTo-Beから逆算する訓練を受けています。しかし事業会社はAs-Isの積み重ねで動いています。この時間軸の違いが、摩擦を生みます。
特に日本企業では、業務プロセスは人間関係と密接に結びついています。非効率に見えるフローの裏には、過去のトラブル回避や部門間の力学が隠れています。
正論は、現場にとっては「歴史の否定」に聞こえることがあるのです。
さらに失敗する人は、論理的優位を無意識に誇示します。会議で鮮やかに構造化し、矛盾を指摘し、合理性で圧倒する。しかしそれは短期的には喝采を浴びても、長期的には静かな反発を生みます。
PwCの調査でも、DXの成果が期待通りと答えた企業は限定的でした。その背景には技術以前に、組織的合意形成の難しさがあります。
つまり、課題はロジックではなく「感情のマネジメント」です。
ポストコンサルで成功する人は、まず否定しません。現場の言葉を繰り返し、背景を理解し、小さな改善から始めます。正論を一度封印し、共通言語をつくることに集中します。
逆に失敗する人は、「なぜこんな非効率が残っているのか」と口にします。その瞬間、変革は止まります。
DXの本質はテクノロジー導入ではなく、行動変容です。正論を振りかざすのではなく、正論が自然に受け入れられる土壌を耕せるかどうか。それがポストコンサル転職の明暗を分けます。
ブラックボックス化したレガシーと技術リテラシー不足という落とし穴
DX推進において見落とされがちですが、最も深刻な障壁の一つがレガシーシステムのブラックボックス化と技術リテラシー不足です。
キッセイコムテックの分析でも、既存システムの複雑化・属人化がDX失敗の主要因として挙げられています。長年の継ぎ足し改修により、全体像を把握できる人材が不在となり、「触ると壊れる」状態に陥っている企業は少なくありません。
実際、多くの企業で基幹系システムは事業部ごとに最適化され、データ定義も統一されていません。結果として、売上や顧客データを横断的に分析しようとしても、抽出・整形だけで数カ月を要するケースが発生します。
| 典型的な問題 | 現場で起きる事象 | DXへの影響 |
|---|---|---|
| 仕様の不明確化 | 設計書が存在しない・更新されていない | 改修コストが膨張 |
| データ定義の不統一 | 部門ごとに異なる顧客ID管理 | 全社分析が困難 |
| 属人化 | 特定担当者しか理解していない | 退職リスクが経営リスク化 |
さらに問題を深刻化させるのが、推進側の技術リテラシー不足です。SIGNATE総研によれば、DX失敗理由として「IT・データに関する理解不足」や「経営層のコミットメント不足」が上位に挙げられています。
戦略資料でAIやクラウドを語れても、API連携やデータ基盤の構造を説明できなければ、現場エンジニアとの議論は成立しません。その結果、「ベンダー任せ」「情シス任せ」の構図が固定化され、意思決定がブラックボックスの上塗りになります。
DX責任者を目指すのであれば、最低限のアーキテクチャ理解とデータ構造への感度は必須条件です。
重要なのは、コードを書けることではありません。クラウド構成図を読み解き、データフローを把握し、ベンダー提案の妥当性を判断できる水準です。PwCの調査でも、成果を出している企業はITモダナイゼーションを経営課題として扱っていることが示唆されています。
ブラックボックスを解体するには、まず現状の可視化から始めます。システム棚卸し、データ項目の定義統一、権限構造の整理といった地道な作業を軽視すると、華やかなデジタル施策はすべて砂上の楼閣になります。
レガシーを敵視するのではなく、構造を理解し、段階的に刷新する。そのための共通言語を持てるかどうかが、コンサル出身者が信頼を得られるか否かの分水嶺になります。
最初の90日で信頼を勝ち取る――内部コンサル成功のアクションプラン
内部コンサルとして入社した最初の90日は、その後のキャリアを左右する決定的な期間です。DX失敗の主因として経営層のコミットメント不足や現場の抵抗が挙げられるとSIGNATE総研が指摘するように、初動で信頼を得られなければ、どれほど優れた戦略も机上の空論に終わります。
最初の90日の目的は「正しさ」を示すことではなく、「味方」を増やすことです。そのためには、フェーズごとに意図を明確にした行動設計が不可欠です。
| 期間 | 主目的 | 具体アクション |
|---|---|---|
| 0〜30日 | 組織理解と信頼の土台作り | キーマン面談、現場同行、データ確認 |
| 31〜60日 | 小さな成果の創出 | 集計自動化など即効性ある改善 |
| 61〜90日 | 変革テーマの提示 | 中期DX仮説の共有と賛同者形成 |
最初の30日は、提案を急がないことが鉄則です。PwCの調査でもDX成果が期待通り以上と回答した企業は38%にとどまっており、多くの現場は「また新しい施策か」と警戒しています。ここで重要なのは、誰が実質的意思決定者か、どこにボトルネックがあるかという“組織の地図”を描くことです。
次の30日では、現場が長年困っていた具体課題を一つ解決します。例えば、部門横断で手作業集計していたKPIレポートを簡易BIで可視化するなど、投資対効果が明確で負荷を下げる施策が有効です。クイックウィンは規模よりも体感価値が重要です。
最後の30日で初めて、より大きな変革仮説を提示します。この段階では既に「役に立つ人」という評価が形成されているため、批判ではなく建設的議論が可能になります。影響力のある現場リーダーを巻き込み、非公式な推進チームを組成することが次の布石になります。
内部コンサルの成功はスキルより順番で決まります。傾聴、即効性ある成果、そしてビジョン共有。この三段階を意図的に設計できる人材こそが、将来的にDX責任者として組織全体を動かせる存在へと進化していきます。
コンサル志望者が今から準備すべきスキルセットと案件選びの戦略
将来的に事業会社のDX責任者を目指すのであれば、今この瞬間から準備すべきスキルは明確です。PwCのDX調査では、成果が「期待通り以上」と答えた企業は38%にとどまり、人材育成が進んでいる企業は15%という結果が示されています。つまり戦略を描ける人材ではなく、実行を完遂できる人材が決定的に不足しているのです。
まず磨くべきは「実行力を伴うプロジェクト推進力」です。単なる戦略立案ではなく、PMOや伴走型支援を通じて、要件定義から開発・定着までをやり切る経験を積むことが重要です。実行フェーズで人材が「大幅に不足している」とする企業が46.2%に達しているという調査結果は、このスキルの希少性を裏付けています。
次に不可欠なのが「翻訳力」です。経営の抽象的なビジョンを、現場が動けるKPIや業務要件に落とし込む力です。コトラの分析でも、論理的思考力やプロジェクト管理能力といったポータブルスキルが事業会社で評価されると指摘されていますが、そこに現場との共通言語を持つ姿勢が加わって初めて信頼が生まれます。
| スキル領域 | 具体的行動 | 市場価値への影響 |
|---|---|---|
| 実行型PM力 | PMO・要件定義・定着支援まで担当 | 実行不足市場で高需要 |
| テクノロジー理解 | クラウド・データ基盤の基礎理解 | 情シスと対等に議論可能 |
| 合意形成力 | 部門横断調整・利害整理 | 内部昇格の鍵 |
加えて、案件選びの戦略も重要です。今後のキャリアを左右するのは、どの業界かよりも「どのフェーズに関与したか」です。PoC止まりの案件よりも、本番実装や業務改革まで踏み込むプロジェクトを選ぶべきです。特に、外部ベンダーをコントロールする立場での経験は、将来の内部コンサルやDX責任者に直結します。
さらに、可能であればP/Lに近いテーマを扱う案件を優先してください。デジタル施策が売上や利益にどう接続するかを説明できる経験は、年収2,000万円の壁を超える人材に共通する要素です。単なるコスト削減ではなく、収益創出に関わるテーマを意識的に選ぶことが、長期的な市場価値を決定づけます。
戦略だけでなく実行、技術だけでなく翻訳、部分最適でなくP/L視点。この三点を軸にスキルを設計し、案件を選択できるかどうかが、コンサルタントからDX責任者へ進化できるかの分水嶺になります。
参考文献
- PwC Japanグループ:2025年DX意識調査―ITモダナイゼーション編―
- 株式会社メンバーズ:【攻めのDX実態調査2025】変革進行も内製化にジレンマ、人材不足が課題
- KOTORA JOURNAL:ポストコンサルタントの未来:次に進むべきキャリアパス10選
- CDO Club Japan:楢﨑 浩一 氏(Japan CDO of The Year 2018 受賞)
- CDO Club Japan:米谷 佳夫 氏
- デロイト トーマツ グループ:「役員報酬サーベイ(2024年度版)」の結果を発表
- SIGNATE総研:DXが失敗する7つの理由|よくある課題と解決策を解説
