コンサルティング業界を目指す人にとって、どのファームに身を置くかは単なる就職先の選択ではなく、人生戦略そのものです。給与やブランド力だけでなく、どんな価値観のもとで働くかが、キャリアの満足度と成長スピードを大きく左右します。特に、同じBig4に属するEYとKPMGは、一見似た存在に見えても、内側に宿るカルチャーDNAは驚くほど対照的です。
EYは「Building a better working world(より良い社会を構築する)」というパーパスを掲げ、社会課題の解決をビジネスの中心に据えています。理想を現実に変える挑戦を楽しむ人にとって、ここは最高の舞台です。一方、KPMGは「Inspire Confidence, Empower Change(社会に信頼を、変革に力を)」という理念のもと、誠実さと信頼性を軸にクライアントと共に歩む堅実な文化を築いてきました。落ち着いた協調的な環境で、着実に専門性を高めたい人に向いています。
この二社の違いは、理念だけでなく、組織構造、働き方、キャリア形成、そして社会との向き合い方にまで及びます。本記事では、EYとKPMGの文化をデータと事例に基づいて徹底的に比較し、あなたに最適なファームを選ぶための実践的な視点を提供します。コンサルタントとしての未来を描く第一歩として、両社のカルチャーを深く理解することが、あなたのキャリア成功の最短ルートになるはずです。
コンサルティングの成功を左右するのは「カルチャーフィット」

コンサルティング業界において、どのファームを選ぶかは単なる就職の問題ではなく、自分の人生観や価値観を試される選択です。年収や案件の規模だけで判断するのはもったいないほど、ファームごとに根付く文化や理念には大きな違いがあります。特にBig4の一角を占めるEYとKPMGは、同じ「グローバルコンサルティングファーム」でありながら、まったく異なるカルチャーを育んできました。
この違いを理解することは、入社後のキャリア成功率を大きく左右します。リクルートワークス研究所の調査では、自身の価値観と企業文化の一致度が高い社員は、低い社員に比べて「職務満足度が2.3倍」「離職率が半分以下」になると報告されています。つまり、カルチャーフィットは給与や職位よりも重要な成功要因なのです。
EYとKPMGを比較すると、それぞれが目指す方向性が異なります。EYは「Building a better working world(より良い社会を構築する)」という壮大なパーパスを掲げ、社会課題の解決を企業活動の中心に据えています。一方で、KPMGは「Inspire Confidence, Empower Change(社会に信頼を、変革に力を)」という現実的で誠実な理念を掲げ、信頼性を最優先にした文化を築いてきました。
両社の違いは理念だけにとどまりません。EYは革新とスピード、KPMGは誠実さと安定性という対極的な価値観を体現しています。EYでは変化を恐れず挑戦する姿勢が評価され、KPMGでは堅実に信頼を積み上げる姿勢が評価されます。この違いが日々の働き方やプロジェクトの進め方、人材育成のスタイルにまで深く反映されているのです。
以下は、両社のカルチャーを象徴する要素を簡潔にまとめた比較表です。
項目 | EY | KPMG |
---|---|---|
パーパス | Building a better working world | Inspire Confidence, Empower Change |
価値観の中心 | 社会的インパクト・長期的価値 | 信頼・誠実性 |
社風 | チャレンジングで理想主義的 | 落ち着いて協調的 |
キャリア観 | 自己実現重視 | 専門性と倫理重視 |
主な強み | 変革力・スピード感 | 信頼性・継続性 |
コンサルタントを目指す上で最も重要なのは、自分がどのような環境で成長したいかを明確にすることです。挑戦を通じて変化を生み出したいならEY、誠実な姿勢で信頼を築きたいならKPMG。カルチャーの違いを知ることが、あなた自身のキャリアデザインの起点となるでしょう。
EYの文化:理想を現実に変えるパーパスドリブン経営
EYの象徴は、世界共通のパーパスである「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」です。これは単なるスローガンではなく、EYの社員一人ひとりの行動や意思決定を導く実践的な理念です。日本法人のEYジャパンでは、この理念を「長期的価値(Long-Term Value)」という経営モデルに具体化しています。
この「長期的価値」とは、クライアント企業だけでなく、従業員、株主、地域社会などすべてのステークホルダーに対して、持続的に恩恵をもたらすことを目指す考え方です。EYのプロジェクトは短期的な利益よりも、社会にポジティブな変化をもたらすかどうかを重視します。たとえば、サステナビリティ支援やグリーントランスフォーメーション(GX)、M&A後の統合支援(PMI)など、「社会価値」と「経済価値」の両立を図る案件が増加しています。
EYが特徴的なのは、個人の価値観と企業のパーパスを結びつける仕組みが整備されていることです。「My Purposeプログラム」では、社員が自分自身の人生の目的を言語化し、それを仕事の意義と結びつけることを推奨しています。この制度により、社員のモチベーションとエンゲージメントは世界平均を上回る水準を維持していると報告されています。
EYのカルチャーを形成する主な要素は以下の通りです。
- パーパスドリブンな経営思想(社会に貢献する意義を重視)
- フラットな組織構造と意見発信の自由
- 社員の「個人のパーパス」を尊重する評価制度
- 多様性と革新を推進する環境(D&Iアワード最高評価)
また、EYの成長戦略もこの文化と深く結びついています。2024年時点で日本のEYグループは12,532名を超え、コンサルティング部門(EYストラテジー・アンド・コンサルティング)はわずか2年で人員を約1.5倍に増加させました。この急成長は、同社が「変化を恐れない」カルチャーを持つ証でもあります。
専門家の間では、EYの文化は「理想主義的だが実行力がある」と評されています。つまり、夢を語るだけでなく、それを現実に落とし込むための構造が整っているのです。理念をビジネスの中核に据え、社会変革を自らのミッションとする姿勢。それこそがEYが持つ真の強みであり、パーパスドリブン経営の本質と言えるでしょう。
KPMGの文化:信頼と誠実性が生む堅実なプロフェッショナリズム

KPMGのカルチャーを一言で表すなら、「信頼に基づく誠実なプロフェッショナリズム」です。EYが理想と変革を追い求めるのに対し、KPMGは現実的で堅実、そして人と人との信頼関係を最も重視する文化を築いています。KPMGジャパンの行動指針である「Integrity(誠実性)」「Excellence(卓越性)」「Courage(勇気)」「Together(協働)」「For Better(より良く)」の5つの価値観は、全社員の意思決定や日々の行動の基盤となっています。
特に「Integrity(誠実性)」はKPMG文化の核であり、クライアントの利益を最優先にする姿勢を貫いています。監査・税務・アドバイザリーのいずれの領域でも、「信頼される専門家」としての誠実な判断が最も尊重されるのです。そのため、短期的な利益よりも長期的な信頼関係の構築を重んじ、クライアントの“真の課題解決”を丁寧に支援します。
KPMGの文化の特徴を整理すると以下の通りです。
項目 | KPMGの特徴 |
---|---|
価値観 | 誠実性・信頼・協働 |
社風 | 落ち着いたプロフェッショナル環境 |
マネジメント | ボトムアップ型で丁寧な意思決定 |
評価制度 | チームワークと倫理観を重視 |
キャリア形成 | 専門性を深めるロングキャリア志向 |
このように、KPMGではスピードよりも「確実さ」「安定感」が重視されます。内部監査やリスクマネジメント分野に強みを持ち、クライアントのガバナンス向上に寄与するプロジェクトが多いことも文化と一致しています。特にESG・内部統制・不正防止など、社会的信頼に直結するテーマで高い評価を得ており、日本企業の信頼を長年にわたって支え続けています。
社員の声からも、その文化は明確です。若手社員のインタビューでは「上司がじっくり話を聞いてくれる」「意見を否定せず、論理的に補ってくれる」といった声が多く聞かれます。人間関係の安定感と安心感が、長期的な成長を支える要因になっているのです。
また、KPMGは“信頼される組織”を内部からも体現しています。ハラスメント防止や働き方改革にも早期から取り組み、ダイバーシティ&インクルージョンに関しても、EYに劣らず積極的です。性別・国籍・働き方の多様性を尊重しながらも、「全員が誠実に仕事に向き合う」という一貫した軸があるため、安定した心理的安全性の高い職場環境が形成されています。
このように、KPMGのカルチャーは「変革よりも信頼」「スピードよりも確実さ」「理想よりも誠実さ」という価値観に支えられています。長く腰を据えて専門性を磨き、クライアントとの関係を育てたい人にとって、KPMGは極めて相性の良いファームといえるでしょう。
組織構造と成長戦略の違い:変革志向のEY、安定重視のKPMG
同じBig4であっても、EYとKPMGの組織構造や成長戦略はまったく異なります。両社の文化的背景が、企業運営の根幹にまで反映されているのです。EYは攻めの拡大路線、KPMGは堅実な深化路線という対比が、両者の違いを象徴しています。
まず、EYは「一体経営」を重視したフラットな組織構造が特徴です。コンサルティング、監査、税務、法務などの部門間の垣根を低くし、クライアントに包括的なサービスを提供する「クロスボーダーチーム」を積極的に組成しています。これにより、社会変革プロジェクトやM&A、デジタル変革(DX)などの複雑な案件に対応できるスピード感と柔軟性を実現しています。
一方、KPMGは明確に領域ごとに独立したプロフェッショナル組織を構築しています。監査、税務、アドバイザリーの専門性を深く掘り下げ、それぞれが独立性と透明性を保つことを重視しています。これは監査法人としての倫理基準を守りながら、クライアントの信頼を確実に得るための戦略的選択です。専門分野ごとに「職人のようなプロ」が揃うのがKPMGの強みです。
両社の成長戦略を比較すると次のようになります。
観点 | EY | KPMG |
---|---|---|
成長方針 | 変革と拡大志向 | 信頼と安定志向 |
組織構造 | フラットで協働的 | 明確に分業化された専門体制 |
注力分野 | デジタル・サステナビリティ・戦略コンサル | リスク・監査・ガバナンス支援 |
海外展開 | グローバル連携が強い | 各国法人の自律性を重視 |
働き方 | チーム横断型・スピード重視 | 専門分野集中・品質重視 |
EYは2023年に、全世界で「EY One Strategy」という統一ビジョンを策定し、AI・デジタルを核とした社会変革型コンサルティングを拡大中です。その結果、日本法人のEYストラテジー・アンド・コンサルティングは、わずか3年で従業員数を1.6倍に増加させ、国内外の大型変革プロジェクトを次々と獲得しています。
対してKPMGは、成長速度よりも「持続性」を重視しています。日本では金融・製造・公共セクターを中心に深い信頼関係を築き、長年のクライアントリテンション率(継続契約率)は業界トップクラスです。特に、内部統制・ガバナンス分野のリーダーシップは揺るぎなく、“変化に流されない強さ”が高く評価されています。
このように、EYとKPMGは組織設計から成長の哲学まで対照的です。スピードと挑戦で自己成長を加速させたいならEY、着実に専門性を積み重ねて長期的信頼を築きたいならKPMG。あなたがどのタイプの成長を望むかによって、最適なファームの選択は大きく変わってくるでしょう。
働き方とキャリアパス:スピード昇進のEY、関係構築型のKPMG

EYとKPMGのカルチャーの違いは、働き方やキャリア形成の設計にもはっきりと現れています。どちらも一流のプロフェッショナル集団ですが、EYはスピード重視の成長型、KPMGは安定した深化型のキャリア志向を持つといえます。
EYの特徴は、年次や年齢に関係なく成果と実力を正当に評価する「メリトクラシー(実力主義)」の文化です。入社3年目でマネージャー昇進を果たす人も珍しくなく、外資系企業の中でも昇進スピードは非常に速い傾向があります。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの内部調査によると、2024年時点でコンサルタントからシニアマネージャーまでの平均昇進期間は約6年。これはBig4の中でも最短クラスです。
さらにEYは、社員一人ひとりのキャリアを「企業との共同プロジェクト」として設計しています。社内公募制「Mobility制度」により、国内外の他部門や他国法人への異動が柔軟に可能です。例えば、東京で戦略コンサルを経験した社員が、ロンドンのESGチームに転籍するケースもあり、グローバルなキャリア構築が現実的に実現できる環境が整っています。
一方で、KPMGのキャリアは「深く、長く、信頼を築く」方向に重きを置いています。年功ではなく実力主義であることに変わりはありませんが、評価基準には「チーム貢献度」「クライアントからの信頼」「倫理観」など、“人としての信頼性”が重要視されます。そのため、社内競争というよりは「仲間と共に成長する」という雰囲気が強く、穏やかで協調的な文化が根付いています。
KPMGでは専門分野ごとの深いキャリアパスが設計されており、監査・リスク・サステナビリティなどの領域で長期的にスキルを積み重ねることができます。特に「SME(Subject Matter Expert)」と呼ばれる専門職制度が充実しており、管理職に進まずとも専門性でキャリアを極められるルートが存在する点は大きな特徴です。
両社のキャリアパスを比較すると、以下のような違いが明確になります。
項目 | EY | KPMG |
---|---|---|
昇進スピード | 早い(実力主義) | 緩やか(協働重視) |
キャリア志向 | 幅広く挑戦・越境型 | 専門分野を深める深化型 |
評価基準 | 成果・インパクト | 信頼・誠実さ・チーム貢献 |
異動制度 | 自主応募制Mobility制度 | 部門内キャリア継続型 |
雰囲気 | 個人の挑戦を後押し | 長期的な関係構築重視 |
EYのスピード感ある環境では、自分の意思でキャリアを切り拓ける反面、成果へのプレッシャーも強くなります。逆にKPMGでは、地に足をつけて専門家として信頼を積み上げるキャリアが形成されやすいです。どちらが優れているというよりも、「自分がどのように成長したいか」こそが、最も重要な判断軸になります。
DE&Iの取り組み比較:EYの外向きリーダーシップとKPMGの内向き包摂文化
多様性と包摂(DE&I)は、現代のコンサルティング業界において欠かせないテーマです。EYとKPMGはどちらもDE&Iに力を入れていますが、そのアプローチの方向性には明確な違いがあります。EYは“外に向けたリーダーシップ型”、KPMGは“内に根ざした包摂型”といえるでしょう。
EYのDE&I戦略は、社会に対して積極的に発信する「リーダーシップ型」です。EY Japanは「D&I推進アワード」で複数回にわたり最高評価を受賞しており、外部評価も非常に高い水準にあります。同社は「Diversity drives innovation(多様性が革新を生む)」という信念のもと、多様な背景を持つ人材がリーダーシップを発揮できる環境づくりを推進しています。
特に注目されるのが、女性リーダー育成プログラム「Women. Fast forward」です。グローバル全体で展開されており、日本でも女性パートナー比率が5年間で約1.8倍に増加。EYは性別や国籍にかかわらず、誰もが意思決定層に到達できるよう明確なロードマップを設計しています。また、LGBTQ+支援においても業界トップクラスで、「PRIDE指標」において最高位の「ゴールド」認定を継続取得しています。
一方でKPMGのDE&Iは、派手さはないものの「組織の根底に浸透する包摂文化」に強みがあります。KPMGジャパンは「One KPMG」という理念を掲げ、誰もが安心して意見を表明できる“心理的安全性”の高い職場を目指しています。特に上司と部下の対話文化が深く根付いており、社員アンケートでは「自分の考えを尊重してもらえる」と回答する割合が9割を超えています。
また、KPMGは「ワーク・ライフ・ハーモニー(調和)」をキーワードに掲げ、在宅勤務やフレックスタイム制の柔軟な運用を行っています。家庭・育児・介護と両立しながら長く働ける環境が整備されていることが、女性社員の定着率の高さにつながっています。DE&I推進室も現場主導で運営されており、全社員が参加できるダイアログセッションが定期的に開催されています。
両社の取り組みを比較すると次のようになります。
観点 | EY | KPMG |
---|---|---|
DE&I方針 | 外向き・リーダーシップ型 | 内向き・包摂型 |
女性活躍 | グローバル施策で積極支援 | ワークライフ調和重視 |
LGBTQ+対応 | 社外認定取得・発信力強い | 内部理解促進型 |
組織風土 | 個を発揮・挑戦促進 | 心理的安全性を重視 |
アプローチ姿勢 | 変革・社会発信 | 定着・共感形成 |
つまり、EYは「多様性を武器に外へ発信する企業」、KPMGは「多様性を内側に根付かせる企業」と言えます。革新を生み出す多様性を重視するならEY、安定した協働の中で自分らしさを活かしたいならKPMGが合うでしょう。コンサルタントとして働く上で、自分の価値観に合った環境を選ぶことが、長期的な幸福度と成果につながります。
プロジェクトスタイルと社会的インパクト:企業変革か、地域創生か
EYとKPMGを比較する上で、実際のプロジェクトスタイルと社会への関わり方の違いは非常に興味深いポイントです。両社ともグローバルな影響力を持つコンサルティングファームですが、そのアプローチはまったく異なります。EYは「企業変革型」、KPMGは「社会共創型」と呼べるほどに方向性が分かれています。
EYのコンサルティング案件は、経営変革・DX・M&A支援といった「大規模・構造的変革」を中心に展開されています。特に、近年の重点テーマはサステナビリティ経営、脱炭素化、AI導入、ESG統合といった“未来志向型の変革”です。EYが掲げる「Building a better working world」というパーパスを具現化する形で、企業の社会的価値と経済的成果を同時に高めるプロジェクトが急増しています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングが公表したデータによると、2024年度のサステナビリティ関連案件は前年比で約170%増加。特に製造業・金融業・エネルギー業界での「グリーントランスフォーメーション支援(GX)」や「統合報告・非財務情報開示(ISSB対応)」などが注目を集めています。EYのコンサルタントは、“変革の実行者”として企業の未来を再設計する役割を担っているのです。
一方で、KPMGのプロジェクトスタイルは「地域社会との共創」や「信頼基盤の再構築」に重点を置いています。特に強みを持つのが、地方自治体や公共機関との協働による地域活性化やガバナンス支援プロジェクトです。KPMGジャパンが近年注力している「地域創生アドバイザリー」は、人口減少や産業衰退に直面する地方都市に対して、持続可能な経済モデルを設計する取り組みです。
また、KPMGは社会的課題に対する「守りのコンサルティング」も得意分野です。ESGリスク管理やサプライチェーン透明化、不正防止・内部統制など、“信頼を守る”ための専門知見を駆使して企業や社会の基盤を支えています。この姿勢は、短期的な成果よりも長期的な安心と信頼を重視するKPMGの文化を体現しています。
項目 | EY | KPMG |
---|---|---|
プロジェクト志向 | 企業変革型(攻めのDX・GX) | 社会共創型(信頼・地域支援) |
主なクライアント | グローバル企業・大手メーカー | 公共機関・地域企業・金融機関 |
社会的アプローチ | 革新によるインパクト創出 | 信頼による持続的成長支援 |
特徴的領域 | M&A・サステナビリティ・AI導入 | ESGリスク・内部統制・地域創生 |
EYが社会を「変革する側」に立つとすれば、KPMGは「支える側」と言えるでしょう。どちらも社会的インパクトを重視していますが、アプローチの軸が異なります。EYのプロジェクトは企業が変わることで社会を動かす構造をつくり、KPMGは社会全体の信頼を再構築することで変化を導くのです。コンサルタントとしてどのタイプの影響を与えたいのかが、ファーム選びの決定的な分岐点となります。
未来のキャリア展望:EYの市場価値、KPMGの柔軟性
EYとKPMGの違いは、入社後だけでなく「その先のキャリアの広がり」にも現れます。どちらも高い専門性を身につけられる環境ですが、キャリアの方向性と市場価値の形成プロセスには明確な違いがあります。EYは“市場価値を高める高速成長型”、KPMGは“持続可能な専門家型キャリア”と言えるでしょう。
EY出身者は転職市場でも非常に高い評価を得ています。理由は、EYが掲げるパーパスドリブンな経営のもとで、経営課題を俯瞰的に捉え、ビジネス変革をリードする力を磨けるからです。EYで培われるのは、企業の「変革をデザインできる」スキルです。そのため、卒業後はスタートアップCXOや外資戦略ファーム、あるいは事業会社の経営企画・サステナビリティ責任者などにキャリア転換する人が多く、「市場価値の高さ」と「リーダーシップ経験の厚さ」が大きな武器になります。
EYは社外とのネットワーク形成にも積極的で、世界中に約40万人のグローバルメンバーが在籍しています。このネットワークを活かし、海外大学へのMBA留学や国際的な出向プログラムに参加するケースも多く見られます。挑戦志向が強く、将来的に独立や起業を視野に入れる人には最適な環境といえます。
一方で、KPMGのキャリア展望は「安定と柔軟性の両立」が特徴です。KPMGは専門性を深めるキャリアルートが明確に整備されており、長期的な専門家として信頼を積み上げていくことができます。特に、監査・リスク・コンプライアンス領域の専門家は日本企業の信頼を支える存在として高い需要を維持しており、安定した市場価値を保ちながらキャリアを築けるのが強みです。
また、KPMGは「ライフステージに合わせたキャリアの再設計」が柔軟に可能です。たとえば、育児や介護などのライフイベントに合わせて勤務時間や勤務地を調整できるほか、内部異動によって業務領域を変えることも可能です。近年は「再雇用制度」や「社内キャリアチェンジ支援制度」も拡充されており、“一社で多様なキャリアを実現できる構造”が整っています。
項目 | EY | KPMG |
---|---|---|
キャリアタイプ | 高速成長・変革型 | 専門深化・安定型 |
転職市場での評価 | 非常に高い(CXO・戦略職) | 高い(専門職・監査・リスク系) |
ネットワーク | グローバル規模 | 日本企業・公共機関中心 |
働き方 | チャレンジ重視 | バランス重視 |
将来像 | 経営層・起業志向 | 専門家・パートナー志向 |
EYのキャリアは「変革のリーダー」としての成長を志す人に、KPMGのキャリアは「信頼される専門家」として地に足をつけたい人に適しています。どちらのファームも、キャリアを通じて社会的影響力を高められる点では共通しています。大切なのは、自分が“どんな形で社会に貢献したいか”という軸を明確に持つことです。それがあなたに最も合ったファーム選びの決定打となるでしょう。
自分に合うファームを見つけるためのチェックポイント
EYとKPMGの文化や働き方、キャリアパスの違いを見てきた中で、最終的に重要なのは「どちらが自分に合うか」という判断です。表面的な年収やブランドではなく、自分の価値観・働き方・将来像との整合性を見極めることが、後悔のない選択につながります。
コンサルティング業界で長期的に成功するためには、カルチャーフィットが極めて重要です。実際、国内外の研究では「企業文化との適合度が高い社員は、離職率が50%以上低い」と報告されています。つまり、自分の志向とファームの性格が一致しているほど、成長も幸福度も高まるということです。
そこで、EYとKPMGを選ぶ際の判断軸を整理してみましょう。
比較項目 | EYが向いている人 | KPMGが向いている人 |
---|---|---|
キャリア志向 | 早期昇進・変革リーダー志向 | 専門家・信頼構築志向 |
価値観 | チャレンジ・スピード・成果重視 | 誠実さ・安定・協働重視 |
働き方 | グローバル・越境的な働き方 | 長期的・地域密着型の働き方 |
プロジェクトタイプ | DX・M&A・サステナビリティ | ガバナンス・リスク・地域創生 |
職場の雰囲気 | 競争的で刺激的 | 落ち着いた協調的環境 |
将来像 | 経営層・起業家志向 | 専門職・パートナー志向 |
こうした比較を踏まえると、EYは「スピード感ある環境で自分を試したい人」、KPMGは「安定した信頼関係の中で専門性を磨きたい人」に向いています。どちらが正解というよりも、どんな人生を歩みたいかという“軸”を持つことが最も重要です。
自分に合うカルチャーを見極める質問リスト
次の質問に自分なりに答えてみることで、自分の価値観をより明確にできます。
- 自分は挑戦と成長のスピードを求めるタイプか、それとも安定した関係の中で深めていくタイプか
- 「結果重視」と「プロセス重視」では、どちらの考え方に共感できるか
- チームでの議論では、積極的に意見を出したい方か、それとも調整・支援側で貢献したい方か
- 社会に与えたい影響は「変革」か「信頼」か
- 将来の理想像は「リーダー」か「専門家」か
これらの問いに対する答えが、自然とどちらのファームにフィットするかを示してくれます。特に、EYは挑戦・スピード・変革を好む人に最適であり、KPMGは誠実・協調・安定を重視する人に向いています。
最後に:ファーム選びは“自己理解”の延長線上にある
ファーム選びを「どちらが優れているか」で考えるのは間違いです。大切なのは、「自分がどんな環境で輝けるか」を知ることです。EYとKPMGはどちらも一流ですが、求める人材像が異なります。EYは自ら動き、未来を変える人を歓迎し、KPMGは信頼を重ね、組織を支える人を重視します。
コンサルタントとして成功する人は、自分の強みと価値観を深く理解している人です。EYの変革のスピードにワクワクするか、KPMGの誠実な文化に安心感を覚えるか。どちらを選ぶかは、あなたがどんな人生をデザインしたいかで決まります。
就職・転職の最終面接で問われる「なぜこのファームなのか」という問い。その答えは、他人の評価ではなく、あなた自身の軸から導き出されたときに、最も説得力を持つのです。